「素数」とは、1と自分自身でしか割りきれない数。
ネタバレしてまずい事ももないと思うので、番組内容にも触れつつ素数について書いていきます。
「2以上の自然数は、素数の積で表すことができる」という素因数分解を習ったと思います。
つまり、「素数は自然数の構成要素である」わけで、物質の構成要素が原子である事になぞらえて、素数は数の原子とも呼ばれています。
素数は無限に存在することがわかっています。
今はコンピュータを使って素数を探すプロジェクトも進められていますが、現在わかっている最大の素数は、2486万2048桁あるそうです。
素数は、その出現の仕方が非常に不規則です。
例えば、100以下の素数は25個存在しますが、不規則に出現します。
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97
素数はどんなタイミングで出現するのか? 素数の並び方に規則はあるのか?
これが、古代ギリシャ時代から二千年もの間数学者を悩ませてきた、最大の難問です。
18世紀に天才数学者オイラーが、素数だけを使った、あるかけ算の答が円周率πと繋がるという大発見をします。
全くランダムに見える素数が、円周率πと繋がると言うことはとても不思議ですね。
その後、ガウスが、素数は自然対数の底 eと関係する事を発見します。
素数は、自然界を説明する定数、πとeと繋がる事が明らかになりました。
これは、すなわち素数が自然界の重要な構成要素である事を示唆しているということになります。
19世紀になり、リーマンがオイラーの式を拡張します。
それがゼータ関数と呼ばれるものです。
リーマンは、ゼータ関数のゼロ点と呼ばれる点の位置が一直線上に並ぶという事を予想します。
それが、リーマン予想。
「ゼータ関数の非自明なゼロ点はすべて一直線上にあるはずだ」
リーマン予想が正しければ、素数の並びに何らかの意味があることの数学的な裏付けとなる、ということになります。
このリーマン予想は数学の難問の中でも、最も難しく最も重要だと言われています。
その後、1972年に数学者モンゴメリーと物理学者ダイソンが、ゼータ関数のゼロ点の間隔を表す式と、重い原子核のエネルギーレベルの間隔(エネルギー準位)を表す式がそっくりである事を発見します。
例によって、また自然界や物理学と関係してきます。
物理学は宇宙や自然の法則を記述しようとする学問ですが、そこに素数が関係してくるのは本当に不思議です。
素数の並びと宇宙の法則に関係があるのかもしれないということですね。
毎回書いてますが、
「数学は人間が自らの頭の中で作り出した発明なのか?
それとも人間とは関係なく大昔から存在していたものを人間がたまたま発見したものなのか?」
「数学は発明なのか発見なのか?」
やっぱり数学は興味深いですね。
素数の応用として、「公開鍵暗号」があります。
今皆さんが使っているインターネットの通信にもSSL(SSL/TLS)の公開鍵暗号が使われています。このSSLの仕組みが素数を使った素因数分解です。ある意味とても身近なところに「素数」が使われていたということです。
ただし、量子コンピュータが実用的になってきたら、この仕組みが成立しなくなるかもしれないとも言われています。
また、生物の分野では「素数ゼミ」と呼ばれる種類のセミが有名です。
北アメリカに分布する17年ゼミや13年ゼミですが、これらのセミは17年ごと、13年ごとに成虫になって大量発生します。
素数年ごとに大量発生するのであれば、発生周期の異なる他のセミと同じ年に発生することはめったにありません。その結果、異種のセミとの交雑や、競合を避けることができ、この素数ゼミが生き残ってきたと考えられています。
(素数どうしであれば、最小公倍数はそれぞれを掛け算したものとなり、とても大きな数字になります。17 x 13 = 221 つまり 221年に一度しか同時発生は起こらないことになります。 もしこれが18年と12年だったとしたら、36年ごとに同時発生してしまいます)
私は、このセミの話を初めて知った子供の頃に、「すごい!生物の生態に素数が関係しているなんて信じられない! セミは素数を知っているのか!?」と、とても感動したことを覚えています。
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