"大きな黒板を見上げて悩む数学者。黒板には右肩上がりの指数関数のグラフが描かれていて、そのグラフの右上に無限大の記号が書かれている"
NHK「笑わない数学」シーズン2#7「1+2+3+4+ ・・・ = -1/12」を見ました。
1+2+3+4+・・・と自然数を無限に足し算していくと -1/12 になる?
全く納得できないし、高校の数学のテストでこの答えを書いたら ✕ になります。
ある数列をずっと足し算していくことを、無限級数と呼び、その答えが「無限級数の和」です。高校で数学Ⅲを選択した人は習ったと思います。
無限級数は、一定の値に限りなく近づいていき「収束」すると「和」を持つといいます。
「収束」せずに、どんどん大きく(小さく)なって無限大(マイナス無限大)になってしまう「発散」と、大小の値を行ったり来たりする「振動」があり、この場合は「和」は持ちません。
1+2+3+4+・・・は、当然無限大に「発散」します。
最初に書きましたが、数学のテストではこれが正解です。
現代数学では、「発散」する無限級数の和を考えることに意味はないとされています。
注意! ここから、少し番組の内容に触れます!
18世紀に、「振動」する無限級数にもなんとか答えを与えたいと考えた数学者たちがいろいろな工夫をして、やや無理矢理答えを与え始めます。
ところが 19世紀になると、数学に厳密な解釈を与えることが主流となり、
「発散する無限級数は和を考えることに意味はない」とされてきました。
19世紀末になると、再び「和」の無いはずの無限級数にも答を与えたいということで、チェザロ総和法やラマヌジャン総和法が考案されてきます。
ラマヌジャン総和法を使うと、「1+2+3+4+ ・・・ = -1/12」が出てきます。
別のアプローチとして、素数に関係する「ゼータ関数」の式に無理矢理(解析接続という方法を使って)範囲外の数値 -1 を代入すると、ラマヌジャンの結論と同じく -1/12 という答えが出てくるということです。
難しくなってきましたが、ここまではあくまでも数学の話だったわけです。しかし例によって物理学と関係してきます
1948年、小さな隙間を隔てた2枚の金属板の間に未知の引力がはたらくという「カシミール効果」が予言されます。そして、この引力が「1+2+3+4+・・・ = -1/12」の式に比例するというのです。
そして、1997年「カシミール効果」が実験で証明されて、大きなニュースとなりました。
物理学では、4つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)を最終的にひとつの力に統一することが大きな目標とされています。
「超弦理論」はその万物の理論(TOE:Theory of Everything)の最有力候補だと言われていますが、その超弦理論では、この数式を用いることができれば、この世界が10次元でできている事が予言できるというのです。
(超弦理論は超ひも理論とも言われることがあるので、そちらの名前を聞いたことがあるかも)
なんだか難しくてよくわからなくなってきますが、今回のテーマの不思議な数式と、物理学が示す現実の世界とが結びついているということでしょうか・・・?
今回もこの言葉は語られませんが、例によって、
「数学は発明なのか、発見なのか?」
と、思ってしまいますね。
NHKの番組スタッフによるブログはこちら
番組スタッフのブログから引用します。
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次回はBSD予想なんですが、そこにもまた、ゼータ関数が出てきます。そして、さらにその次の週は、「笑わない数学」の記念すべき第1回、尾形さんの数学デビュー作である「素数」の回をセレクションとして再放送します。もちろんそこにもゼータ関数が登場しますから、どうぞお楽しみに!
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この番組スタッフのブログを読む前に「素数」の回を NHKオンデマンドで買ってしまいました。(110円でしたが )
*この記事のイラストは、Image Creator の AI によって作成されました