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読書「いつまでも白い羽根」 藤岡陽子 著

藤岡陽子著 「いつまでも白い羽根

新しいわけでもなく(2009年発表)、テレビドラマ化されたりもしているので、知っている方も多いかもしれませんが。
藤岡陽子氏のデビュー作です。

ちょっとだけ内容に触れます。(ネタバレする程ではありません)
大学受験に失敗した主人公が、不本意なまま看護学校に入学。
自分でもいつまで続くかわからないと思いながらも、忙しく過酷な毎日を送っていきます。
10代の心の揺れや頑なさが、淡々とした文章から伝わってきます。
登場する友人や少しだけ仲の良くなる同級生達も、単に良い人というのではなくそれぞれ悩みや問題を抱えているのがうまく描かれています。

これ以上は書きませんが、2009年の作品なので当然メールなども出てきて、そう古い時代設定ではないのですが、なんだか自分達が過ごした昭和の学生時代のような雰囲気を感じます。これは登場人物の性格や行動のせいなのでしょう。
自分が学生時代だったのはもう40年以上も前の大昔です。
時代も違うし、大学と看護学校と全く異なる環境なのですが、その頃日々感じていた痛いような皮膚感覚を思い出しながら読みました。

著者の藤岡陽子氏は、大学卒業後に新聞記者になるも、数年で退社してタンザニアに留学。帰国後、結婚・出産を経て、経済的に夫に依存することに不安を感じ、看護学校に入学して看護師の資格を取得。現在も病院に勤務しながら作家活動を続けているという、なかなかユニークな経歴の方です。

現役看護師なので、医療関係の著作が多くあります。
同じ藤岡氏の作品だと後から気が付いたのですが、私は2015年に「トライアウト」という作品を購入していました。
もうずいぶん前になってしまって細かくは覚えてはいませんが、読後感は良かったことを覚えています。

また、この「いつまでも白い羽根」を読んだ直後に、「波風」という作品も先日読みました。
こちらは短編集で、7編が収録されています。全体的な統一性は無くそれぞれ作風は結構異なります。
(グッと心に響いて泣きそうになる作品もいくつかありました)
私がこの7作品を読んで感じたことをひとことで表すとしたら、
「生きていくだけでも辛いことは多い。でも前を向いて進んで行く」
と・・・、ベタですがこういう事なのかな、という気がします。
でも、これは藤岡作品全体に通じるテーマなのかもしれません。

「波風」は2024年3月13日現在、kindle Unlimited で無料で読むことができます。
kindle Unlimited の対象作品は結構変わるので、読んでみようかなと思った方は今のうちかも。