以前「進化のからくり」でも紹介した、東北大学教授の進化学者、千葉聡氏の最新刊です。2023年11月に別の記事で発売前に紹介したのですが、ようやく読み終わりました。
簡単にまとめるのが難しい本なのですが、
前書き(はじめに)の一部を引用・要約をすると、
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現代の生活でストレスを感じる内容のメッセージには、たいてい進化やダーウィンがらみの言葉が入っている。
「ダーウィンの言うように変化に対応できない企業は淘汰」「進化論に従いビジネスでも適者生存が進むべき」「ダーウィンがそう唱えたように競争原理の下で進化すべき、それでつぶれる大学は自然淘汰」
「進化せよ」「生存競争と適者生存」「ダーウィンがそう言っている」
まさに「呪い」である。
「呪い」のようなものに対処するには、まずその由来を知ることが、その言葉の魔力を緩和することには役立つ。
何より、新たな魔力に取りつかれて呪詛を唱えるようになるのを、多少は防ぐことができるかもしれない。
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この最後の部分が、筆者がこの本を書こうとした目的なのかな、と思いました。
内容は、1章から7章までが「進化学」について歴史と共に書かれます。
8章から11章までは「優生学」について、これも歴史と共に書かれています。
進化学はイメージがつかめるかと思いますが、「優生学とは?」と思われるかもしれません。
ダーウィンの従弟で優生学の創始者であるゴルトンは「優生学とは、民族の先天的な資質を向上させるあらゆる効果を研究する科学であり、その効果が最大限に発揮されるよう導くものである」と定義したそうです。
優生学は、ダーウィンの進化論を極度に単純化して、優れた(と決めつけた)者を優遇し、劣った(と決めつけた)者を切り捨てることで、民族・国家全体を向上させようという考え方です。
為政者たちが差別的行為を正当化し、ダーウィンの進化論を政治に利用してきた歴史があり、最終的にはヒトラーにまで行きつきます。
最後の12章ではゲノム改変(ゲノム編集・遺伝子操作)の現状と今後について、著者の意見もかなり強く含めながら書かれています。
全体としては著者の博覧強記ぶりに圧倒されます。膨大な情報量ですね。
電子書籍版で読んだので、「読書の進捗状況」をパーセント(%)で示すことができるのですが、80%を超えたあたりで「あれ、そろそろまとめに入ってるよな?」と思ったら、その通りで82%で本文は終了してしまいました。
つまりその後の18%(50ページ分)はすべて「参考文献」でした。
これだけでも、情報量の凄さがわかります。
外国の学者の名前が多数登場し、また話題も次から次へと飛び出してくるので、読む方は翻弄され決して読みやすい本ではないと思います。
それでも、進化学や優生学、ゲノム改変(ゲノム編集・遺伝子操作)などに興味のある方には、
お勧めします。
「ゲノム編集」については、この手法を発見してノーベル化学賞を受賞した、ジェニファー・ダウドナ本人による著書「クリスパー CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見」が良かったです。私は2018年に読みました。先ほど調べたら、今は文庫になり安くなっていました。
この本もいずれ紹介したいと思います。
こちらも強く、
お勧めします。