以前のセミに関する記事で、「カゲロウ」の事にもちょっと触れ、その時に少し調べたんですが・・・⬇️
なんと「カゲロウ」に関して大きな誤解をしていたことがわかりました。
かつて、こんなことがよく言われており、私も長い間信じていました。
「ウスバカゲロウの幼虫はいわゆる "アリジゴク" で、悪魔のような幼虫時代をおくるのに、成虫になると口も消化器官も持たず、わずか1日で死んでしまう儚い生き物だ」
ところが、今回カゲロウの事を調べていると、「ウスバカゲロウ」と「カゲロウ」は全く別の昆虫だということがわかりました。😮
ウスバカゲロウのグループの一部の幼虫は確かに「アリジゴク」です。
「アリジゴク」は軒下等の砂地にすり鉢状のくぼみを作り、その底に住んでいて、落ちてきたアリ・ダンゴムシ・クモ等に砂を浴びせかけ、くぼみの中心部に滑り落として捕まえます。(上の写真)
捕まえたアリ等の体液を吸って残った外骨格(から)はくぼみの外に投げ捨てるという、なかなかにエグい幼虫時代を送ります。
そして、その「アリジゴク」は蛹(サナギ)を経て成虫になりますが、その成虫はわずか1日で死んでしまう儚い「カゲロウ」ではなく、「ウスバカゲロウ」という全く別の昆虫でした。
この「ウスバカゲロウ」の成虫には、口も消化器官もあり肉食で数週間以上は生きるようです。越冬するものもあるとの情報もあります。
一方「カゲロウ」の幼虫は、川などに住み、当然口も消化器官も持ち、食性は様々なようです。
そして、「カゲロウ」は蛹を経ずに成虫になり、それが口や消化器官を持たず、数時間から数日しか生きられない、いわゆる「カゲロウ」です。
まとめるとこういうことです。
・アリジゴク → ウスバカゲロウ(幼虫も成虫も肉食)
・カゲロウ(幼虫は水生、成虫は口や消化器官を持たず数時間から数日しか生きない)
悪魔のような幼虫「アリジゴク」から、儚い成虫になるというのは、話として面白く、また名前も似ていたので、2種の昆虫の生態が混ざり、間違って伝えられていたのですね。
直接高校の授業で教える内容ではありませんでしたが、40年近くも生物を教えてきて、私も長い間誤解していました。うぅん、お恥ずかしい次第ですね・・・😣
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ザックリですが、分類学的に・・・
・ウスバカゲロウは、アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科に属し、完全変態(蛹になる)。
・カゲロウは、カゲロウ目の昆虫で、その下に多数の科がある。不完全変態(蛹にはならない)。
「目」(もく) は分類学上の生物のグループです。「目」の上には「綱」(こう) が、下には「科」があります。
身近な、哺乳綱(一般的には「哺乳類」と言われる)の例の方がわかりやすいと思いますが、例えば、我々「ヒト」は「哺乳綱 霊長目 ヒト科」に属します。
「哺乳綱」には他の例として「食肉目」という「目」もあり、その下に「ネコ科」「イヌ科」「クマ科」などがあります。
この例からも、「目」が異なると、いわゆる別の種類の動物になっているということがわかります。
そういう意味でも、ウスバカゲロウは「アミメカゲロウ目」、カゲロウは「カゲロウ目」なので、近縁関係としては、かなり遠いということです。
また、昆虫には「完全変態」と「不完全変態」があります。
「蛹」(さなぎ)になるのが「完全変態」で、より新しく出現した、進化しているグループです。
その点からも、「カゲロウ」は「不完全変態」の古いグループなのに対し、ウスバカゲロウは「完全変態」をするので、まったく別の新しいグループだということもわかります。
★★★ 「不完全変態」が古い、「完全変態」がより新しいといっても、どちらも絶対的には遠い昔の話です。
見つかっている化石などから、
「不完全変態」の昆虫は「古生代石炭紀」(約3億5920万年前~ 2億9900万年前)、
「完全変態」の昆虫は「古生代ペルム紀」(約2億9900万年前~ 2億5190万年前)に多くの種が現れたようです。